イベントレポート 「海外企業で働くということ 〜多文化力・グローバル力とは?」(動画あり)

テキスト:水谷美保

  海外企業で働くということ〜多文化力・グローバル力とは?をテーマに、日本時間2019年12月20日(金)にオンライントークイベントが行われました。

 スピーカーは実際に海外企業で働いてこられたこのお2人、栗崎由子さん(パリの経済協力開発機構(OECD)や、スイスに本社を置く多国籍企業などで30年以上の勤務経験)、佐藤隆之さん(MBAプログラマーとしてバルセロナの企業に就職し、プロジェクト管理や経営企画を行う)そして海外ヘルプデスクからは秋田まきが司会進行をしながら盛沢山のリアルトークが聞けました。

 

 そもそも何故お2人(今後よしこさん、たかさん、とお呼びします)は海外で働くことになったのでしょうか。よしこさんは、パリに住みたかった、日本では女性の働きにくさを感じていた、小さい頃から外国に興味を持っていたし旅行も好きだった、の主に3つ。たかさんは中学生の頃サッカーのワールドカップ見て、世界をまたにかけて活躍したい、漠然と思っていたことがきっかけ。どこにでもありそうなきっかけに聞こえませんか?でもそれを実行に移したのが大きな違いかもしれません。そして実行に移した後には想像もしていなかった苦労もやってきます。

 

 よしこさんは、初めの1年間全く仕事が無かった。。おかしいな、することが無いな、と思っているうちに、1年半が経ってしまうことに。華々しい活躍なんて何もなかった。でもそこからの変化がまた一躍です。仕事が無い間も色々相談にも行ったりと行動は起こしていても、なかなかピンとアドバイスもないままやっと気付いこと、それは「自分の心の持ち方を変えるんだ」でした。そこから仕事がどんどん舞い込んでくることに。自分から仕事をプロポーズするようになり(待っているのではなく!)自分でリサーチして、レポートを書いて、と受け身でいることを変えたそう。つまりは心の持ちようが変わったということ。『周りとの関係は自分が作っていかないといけない』の気付きが仕事への変化をもたらしました。

 ただその一方で、住むこと、これには慣れるまでに相当手を焼いたそうです。

 

 たかさんは、バルセロナに来て夢がかなった、と思ったが甘かったと愕然。。最初は日本とスペインの共通点を探して共感を持っていたが、働き始めると表面的には同じでも全然理論が違うことに落胆。Eメールのやりとり一つとっても日本では9割だった返信率もここでは3割。そこで『相手の優先順位をあげていく、その優先順位を上げるために何かプッシュをする』という行動に出たそうです。日本では仕事はあるだけ周りがやってくれる、という文化に慣れていたが、それは全く通用せず、働き方の違いを目の当たりにしたそう。プッシュするコミュニケーションの仕方は日本では厚かましい、やりすぎと思われるかもしれないけれど、それが必要な現場もある、という実体験が聞けました。“暗黙の了解”がある日本ですが、海外では“まずNOから始める!”という方々も多く、でもそうやって議論を深めていく方達も多い、のは驚きでしたと語ってくれました。

 

 そして誰しもがぶつかる言葉の壁。お2人はどう乗り越えていったのでしょうか。

 答えは、『語学の壁はまだ乗り越えていません!』『できると思ったら大間違いだった!』。共感と驚き、そして安堵もやってきませんか^^;? そしてよしこさんは『壁は言葉よりも物の考え方や価値観とか文化の違いによるものが大きかった』と断言。そして『“マナブ(学ぶ)”より“マネブ(真似ぶ)“』の金言も聞けました。〈人の振り見て我が振り直せ〉ということわざもありますが、経験豊かな同僚が使っている英語、ビジネスレターで使われていた英語表現を真似て真似てそこから学ぶ。それをよしこさんは繰り返してきたそうです。『言葉だけではなく、物の考え方の違いを理解してからこそ、言葉本来の持つ意味が理解できるようになった』と。でもそれを知ることにも時間がかかったそうです。

 たかさんは司会進行からの「心が折れたことはありますか?」の質問に対して『折れることばかりです』の回答。そして『語学への近道は無いように思う』、のコメントが筆者には響きました。こんなに活躍されている現在のたかさんでもまだ新しい単語に出会うことが毎日で、それを勉強しながら日々精進されています。

 お2人ともお仕事では英語が共通言語、そして外ではフランス語、そしてスペイン語を使用するバランス力の保持者。そこからは見えない努力も伝わってきました。会社では「苦手なことは出来る人にやってもらう」というような柔軟性があることで語学の壁をうまく回避したりもできます(たかさん)。アドバイスとしては『自分を許してあげるしかない、やっていることを認める、タブーを知る』。壁のマネージの仕方は人それぞれですが、留学すると「日本人とばかりつるむのは良くない」、というアドバイスも聞かれるなか、たかさんの場合はくじけそうになったら日本のテレビなどを見たりして癒されたそうです。その方が長続きするように思う、とおっしゃっていました。「自分に厳しくし過ぎない」、これもポイントの一つかもしれませんね。

 

 事前に参加者から受けた「“住む”だけならなんとでもなるけれど、“暮らす”となると違いますか?真のグローバル力が試されますか?」の質問から「多文化力、グローバル力を養う上で効果的だったことや重視していることなどありますか」を聞いてみました。

 よしこさんからは開口一番『好奇心がとても大事!』。『自分の決めた枠の中だけで生きるのではなく、あぁそうか、と思えばいい。ジャッジせず、文化の違いを面白がるだけ。仕方ないじゃん、と思う、赤ちゃんが素手で乗り込んだのと同じと考えること』、のアドバイスが聞けました。

 司会進行から「Don’t take it personally(私はあなたのここを批判するけど、人格を否定している訳ではないので、個人的に取らないでください)、をよくアメリカで使いますね」のコメントが出ると、よしこさんからは『言葉と心は別物、とはっきり分かれているのがすがすがしい。マインドチェンジのような教育を日本では受けてきていない、日本での教育は練習不足です』とぴしゃり。教育の違いが文化の違いも生み出していることを再確認しました。

 たかさんは『インターナショナルとグローバルの違い』を話してくれました。

 『今までは日本企業が海外市場、産業に進出するようなビジネスケースが多く、日本人がアメリカ人になる、アメリカの文化になじむ、のような文脈があったが、最近はグローバル化が進み、地球全体が市場になっているといえる。日本人が外国人になる必要は無く、日本人としての強みを出す、ことが期待されていると思う。』

 例としては『周りの人が時間に遅れても自分は遅れない、勤勉さを持ち続ける』など。どの国の人も強みと弱みがあるので、そこをお互い補完して生かしていく、それが企業として強くなれる、それがグローバル力なのではないか、と熱く語ってくれました。そして「ちゃんとしてる」というのが日本人は世界的に見てトップレベル、と感じているそうです。筆者強く同感します。

 よしこさんからはとても興味深い本の紹介もしていただきました。ホフステード氏著の「国民文化の6つの次元」は綿密な調査結果に裏打ちされた、いろいろな文化を語る言語で、これを学んだことで『全部の色々な文化を相対的に見る』、ことができるようになったそうです。早く分かっていればOECDであんなに苦しまないで済んだのに、と少しの後悔も添えて。。これから海外を目指す、という人も、今を苦しんでいる方も一度この本を読んでみてはどうでしょう、と推薦してくださいました。

 

 このホフステード氏の本には6つの指標があり、その中でも日本人が高く指数が出る点が2つあると書かれています。それは(1)不確実性の回避ー石橋をたたいても渡らない、(分からないところは絶対にやらない)、(2)マスキュリニティ(男性らしさ)ー「完全主義者」としての指数、だそうです。自分では常識だと思っていることでも、異なる国の文化もあるのだから、それを知っていると苦しまないで済むかもしれない。日本人の場合、完全主義者であることは、できない自分を罰していることも多いという事を指摘くださいました。

 

 参加者からの質問、「海外での仕事、ここが分かっていると苦労しないというポイントはありますか? 文化や人間関係を知りたい」から、お2人に『心がけているとつまづかないで済むよ』、というポイントを聞いてみました。

 たかさんからは『日本にいると、以心伝心、言葉にしないコミュニケーションに依存している。空気を読むなどは海外では通用しにくい、に気付くこと。』

 よしこさんからは、ホフステード氏の著書内の指数からも言えるように、例えば「暮らしを大事にするか、仕事を大事にするか」のような国民性の違いなどを知っておくことも大事。

 

 最後にお2人から『海外で働くことに興味を持っている方達や、これから海外企業で働く若者に一言』をフリップボードに書いてもらいました。

 よしこさんは『イカロスの翼』。『自分がやりたいと思ったことは全てやってください。経験が最高の先生だと思います。イカロスの翼というのは「人間は基本的に自分が思っているより自由なんだ」っていう例え。神にさえしばられない、これが本当の自由なんだ。生き方もそうだと思う。自分で自分に制限をつけないでまず行動をしていただきたい、と思う。』

 たかさんは『「ゆるくはじめる」~好き、得意、稼げる、の反復検証~。生きがい、働き甲斐を見つけるにはどうするか、の議論の際、好き、得意、稼げる、社会が求めること、この4つが重なったところに働き甲斐がありますよという話がある。それを見つけるのはやってみないと分からない。好きなことも得意なものを見つけるのもまた難しい。海外に行ってみたけど合わなかった、それはそれでいい。やはり繰り返してみて、全てが成功失敗ではなくて、繰り返しの検証のプロセス、と考えることが「ゆるくはじめる」です。できることから検証していくこと。』

 

 当日は最大19人がオンラインで視聴するなか、終始深いうなづきあり、笑いあり、の大変盛り上がったトークイベントとなりました。有意義な時間に感謝です。

 イベントの後は小グループに分かれ、一層活発な交わりが行われました。よしこさん、たかさん、ありがとうございました!

 もっとお2人を知りたい、という方はトーク部分の動画を公開していますので、ぜひ海外で働く2名の登壇者の生の声をお聞きください。よしこさんの「地球市民塾」、たかさんの著書『ゆるくはじめる海外就職』『起業のアイデアがわいてくる本』などもご覧ください。

 


 

​イベントのご感想

​イベントのご感想

小さい子がいて結局、聞くだけ(聞き流し)参加状態でしたが、
スピーカーのお二人の貴重なお話を聞くことができてとても励まされました。

私自身、6年前に仕事を止めてアメリカに来て、その後出産・育児でほぼ引きこもり状態。
こどもが4歳になり、ようやくそろそろ働きたいと思っていつつあるのですが、
なにせ留学経験も、アメリカでの就業経験も無く、「なにから手をつけていいのやら」という状況でした。

国際経験豊かなお二人のお話は当初「(キャリアが)私とは、ずいぶんかけ離れているな」と思ったのですが、
お二方もいろいろ経験しながら、失敗やキャリアを積み重ねてきたこと、
そして「まずゆるくはじめて、見直して修正していくこと」という言葉はとても励みになりました。

交流会参加できず残念でしたが、また別のチャンスに!
このような素晴らしい学びの機会をありがとうございました!

高校生の娘と共に参加させて頂く予定でしたが、滞在国のネット環境のためか、最初なかなか繋がらず、後半の部分しか聴けませんでした。その部分だけでも興味深い内容でしたので、早速栗崎さんのご著書を購入してみました!

ベント開催いただきありがとうございました。

とても学びの多い貴重な時間となりました。

 

私自身、国際機関への就職に興味があり、OECDにアプライしたこともあるので、栗崎さんのお話はとても参考になりました。一度や二度で諦めてはいけない、とにかくたくさんチャレンジしていくことが大切だと教えていただきました。

 

また佐藤さんの、「インターナショナルとグローバルの違い」も新しい気づきでした。日本人としての強みを生かしていくことがこれからのグローバル社会で求められているという点に励まされました。

 

まきさんの進行もとても素敵でした。オンラインでああいった場をアレンジするのは大変だと思います。貴重な場を設けてくださりありがとうございました。

 

また次回以降のイベントも楽しみにしています。どうぞよろしくお願い致します。

私自身はこれから、海外就職をもくろんでいる

…というわけではないのですが〜

  

 

来年オリンピックを機に

国内パラダイムシフト_時代や分野で当然のことだった認識や価値観が

おおきく変化することは必至かなと思うのです。

内面的にはもう始まっている人、少なくない気がします。 

 

 

わたしの働く国が変わる?今、働いている環境が変わる?

相手にする人、国が変わっていく?

なんとも予想がつかないですが、

なんだか興味がむくむくしてきたので行ってきました^^

 

 

興味深いお話しがたくさん聞けたこと、

普段は出会えない、経験豊かな方にも

自分の中の素朴な疑問

 

ーーーー

 

『でもでも、こういう時って、ドウスルノ?』

 

『実際ドウナノ??』

 

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を、サラッと聞けてしまうイベントでした!

  

  

毎回思うのですが、この「質問タイム」が充実です♪

こんなにも遠く離れている海外に住まう人、なかなか会えない人が

丁寧に答えてくださる環境って

本当にありがたい。 

未知なる出会いが楽しくなるイベントに

今後も期待大です。

 

 

 

〜ヘルプデスク相談員佐藤ナホさんによるレポートと感想(ヘルプデスク公式ブログ)より

ご参加大変ありがとうございました。​​

 

→イベント趣旨「海外企業で働くということ 〜多文化力・グローバル力とは?」

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